「挫折するときの心構え」の章
1、まずは、一本の電話から
あなたが人生に行き詰り、死にたい程悩んでいたら、目の前にある電話や携帯を手にとって、相談機関に電話をかける勇気がありますか。
「しんたけ」(秋田弁で死ぬほど)悩んでいることが、一本の電話が糸口になり「いのちが救われる」ことがあります。電話の向こう側には沢山の相談機関と経験豊富なベテラン相談員がいます。あなたのこころに寄り添いながら、あなたの悩みを解決し、あなたのいのちを懸命に支えてくれます。

2、 すなおに助けを求めましょう
経営者は常在戦場で働いていますから個性の強い人達です。顧客との対応、社員の統率、金融交渉、新規事業の創設等で寝てもさめても事業経営を考えています。頭が休まる暇がありません。それが経営者の楽しみであり、面白さなのです。それだけに、倒産や破産の知識を事前に学習している経営者は殆どいないでしょう。医師が自分の体を、自分では手術することが出来ないように、倒産や廃業は経営者にとっては、自分で出来ない難事になるでしょう。専門的な知識が必要になりますから。いのちを守るためには「我(が)」を捨てて、すなおに、相談機関や専門家(弁護士、司法書士、臨床心理士、医師等)の助けを求めたらどうでしょう。

3、 倒産や破産は民事事件です。刑事事件ではあません。
中小企業の経営者や商店主が行っている事業は経済行為です。経済行為の失敗は財産の清算でお終いです。いのちの清算ではありません。
多重債務の任意整理や民事再生法の制定によって、法的救済の方法が準備されています。安心して専門家(弁護士や司法書士)に任せましょう。
たとえ、会社が破産し、自己破産した場合でも、免責によって復権します。
再び、社会的に復活するチャンスは幾らでもあるのです。
挫折をする度に自殺を考えたら、いのちが幾つあっても足りないでしょう。
自殺することは、自分で自分に死刑を執行することです。とんでもない行為だと思うのです。倒産や自己破産は民事事件です。殺人罪や窃盗罪で刑が執行される刑事事件ではありません。

4、 あなたが自殺したら家族はどうなるか
あなたが自殺した後の家族の状況を想像してみましょうか。自殺した人の葬式はひっそり行われるでしょう。会葬者は、本当の死因はわかっていても、家族の悲しみを思いやって、亡くなった理由を尋ねないでしょう。そして、一年も経つと、あなたの存在は世間から忘れられてしまうでしょう。
一部の人を除いては。
今の日本人は他人の死に関わっているほど、こころに余裕がないのです。
しかし、家族は、あなたが自殺したことを生涯忘れることはできません。妻や子供達はこころに深い傷痕を抱えたまま生きていかなければなりません。
あなたの居ない、火が消えたような家族の生活を想像したことがありますか。

5、家族にふたつの悲しみを背負わせるな
経営者が自殺すると家族は二つの悲しみを同時に背負います。ひとつは倒産の悲しみです。もうひとつは「あなたが自殺した」という悲しみです。倒産は家族にとっても大きな悲しみなのです。あなたが逝った後は、債権者の責めが家族に向けられます。会社の規模にもよりますが、倒産の残務整理は大変なことなのです。あなたは、自分の意思で会社を経営し、自分の夢を追い駆けてきたのではありませんか。自己実現の夢を果たすために。
会社の清算や廃業は、経営者にだけ残された最後の意思決定です。心血を注いだ会社の倒産は「死んだ子供を弔うように」感謝の心をこめて清算しなければいけないのです。あなたは自分の失敗を自分で清算しないで、家族に二つもの悲しみを同時に残して、死んでいこうとしているのですか。

6、生命保険の解約
桜の開花が間もない時、自宅にふらりと一人の男が訪ねて来ました。
2年前の9月末に相談に来られた元社長でした。会社の清算と自己破産の免責が終わり、近況報告に来たのです。相談を受けた時は、倒産が数日後に迫り、緊迫した状態でした。しきりに生命保険の金額を気にしていました。保険金で妻と子供を連帯保証人から外そうとしていたのです。胸騒ぎを感じて、こっそりと奥さんに「生命保険の解約」を勧めたことを覚えています。
男性は次のように語りました。
「あの時は自殺する覚悟が決まっていました。自殺の決行日を9月29日に決めていました。死に場所を求めてあちこち捜していたのです。その年に顔見知りの社長が3人自殺していました。金融機関や保証人に迷惑をかけられないと言う気持ちで死んで行ったのだと思います。会社が倒産すれば死ななければいけないものだと思っていました。仲間の死で、倒産したら死ぬものだと意識に刷り込まれていました。倒産の3日前に保険を確認に行ったら、妻が生命保険を解約していました。保険の解約金150万円が弁護士費用になりました。妻や子供に残すつもりの保険金のお陰で、自分のいのちが救われました」と。

7、 お父さん自殺したら家族は墓参りしないからね
2000年9月14日か、15日のこと。
会社の倒産が避けられないことを、家族に打ち明けました。
(2000年10月2日倒産)
会社もこの自宅もすべて失うと。
「がんばって、がんばって」も万策が尽きました。
ありとあらゆる能力を駆使して、会社の生き残る方法を考えましたが、
時間が経つにつれて、倒産の恐怖が増幅し、うつ病になって、判断力が弱まってしまったのです。
家族は私が自殺するのではないか、と心配していたのです。
倒産を打ち明けた時の長女の言葉を思い出します。
私の顔を見据えて、強い口調で言いました。
「お父さん、家族は、お父さんが自殺したら承知しないからね。自殺したら家族は墓参りしないからね!」
妻や子供達に墓参りされないような父親にはなりたくありません。
だから、どんなことがあっても自殺はしません。

8、人生の難局に逃げないこと
人間は人生80年の時代。
長生きするほど、いろんな楽しみにも会いますが、悲しみにも出くわすことになるでしょう。
失恋、離婚、病気、失業、倒産、多重債務、高齢化、生活不安等・・・・・・。
人生の難局には、どんな心構えで対処したらいいでしょうか。
鉄則は「逃げないこと」です。
人生は大海原を航海する船のようなものかもしれません。波穏やかな好天の日もあれば、波濤渦巻く嵐の日もあります。人生の難局は、大きな波が正面から押し寄せる状況に似ています。慌てて舵を切ったらどうなるでしょう。船が横波をうけて転覆するかも知れません。
それよりは、舳先を波の正面に向けて、波を切る方が、転覆を避けられる確率が高まるのではないでしょうか。
難局に遭遇したら、逃げないこと。正面から立ち向かうことです。
「逃げた経営者」は「俺は土壇場に逃げた」、と自分を責めます。長い間、悔悟の気持ちが抜けません。その分だけ、再起の人生も遠くなります。
人間は他人をあざむくことは出来ても、自分自身のこころをあざむくことは出来ません。(相談現場で逃げた元経営者の後悔をいっぱい聞いて来ました。倒産の時に逃げなければよかったと・・・。)

9、いさぎよい決断
倒産や自己破産の決断はなかなか出来ません。
体験がないこと。プライドが許さないこと。世間体。会社や自宅を失うこと。債権者や金融機関との関係。保証人にかける迷惑。社員の再就職の心配。生活の不安等、幾つもの不安要素が重なります。
意思決定に勇気が必要になります。
逡巡は当然のことですが、決断を先延ばし過ぎると、結果的にはロクなことはありません。思考朦朧で、消費者金融に手をだしたり、親戚、知人、友人から金を借りたり、連帯保証人を追加して傷口を広げていきます。保証人の追加や友人、知人からの借金は、これから生きていく世間を狭くしてしまいます。会社経営は金融機関の融資が止まった段階で、会社の存続の有無の決断をすべきではないでしょうか。判断余力のある内に。どの段階で、どんな決断をすべきか、他人にかける迷惑を最小限にした、潔い決断が必要です。
「熟慮断行」。最後の意思決定は潔く。再起を考えながら。

10、プライドを持った身の処し方
日本の会社数は約430万社。その内の99・7%は中小企業と零細企業です。中小企業は戦後の日本経済の復興を支え、地域経済の繁栄の担い手でした。
現在においても雇用の70%は中小企業が担っています。
会社でも、零細企業でも、個人商店でも、20年、30年と事業を継続すると、相当の固定資産税や事業税、法人税を納入します。社員が納める源泉所得税もその会社が存在することで、国や地方公共団体に納入される税金です。
また、仕入れや販売によって、地域社会に多額の資金を還流します。商店街の形成や地域の活性化に果たす役割も見逃すことはできません。地域社会に長い間、貢献してきた実績は「倒産如きでは、消えない」と思います。
倒産しようが、自己破産しようが、プライドをもって、人生を生き抜いて欲しい。今まで懸命に社会貢献してきたのですから・・・・・。
どんな境遇になっても、プライドを持った身の処し方こそ、人生再起の拠り所だ、と確信します。

コメント
昨年9月にリーマンブラザーズが破綻し、日本経済が不況に陥ってから、一年になりました。日本経済は一進一退の病状にあります。景気が良くなるというとの観測もありますが、いつでも景気回復は大企業業績が優先します。中小企業経営者や商店主の景気は後手、後手の連続です。地方の経営者は、この20年間、地域格差が固定化しつつあり、売上げ不振で苦境に立たされて来ました。地方経営者は夢を失いかけています。待ったなしの状態です。
そこで、急遽、7年間の相談現場で蓄積した、「生きる希望と勇気」の緊急ノウハウを立ち上げました。全体で30位の文章になることでしょう。
挫折しそうになったり、挫折してしまったり、再挑戦している人は、読んでみて下さい。私が倒産しても、自殺しなかった理由や再起の体験、2000回以上の相談現場から学んだ「生きる希望と勇気」の現実を、短い文章に渾身の力をこめて書き上げます。
「倒産如きに負けないで下さい」
「どんなことがあっても自殺しないで下さい」
どんな境遇に遭遇しても、人生をあきらめないこと。挫折しても再挑戦されることを願って・・・・。



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